2025年がスタートして、10日が過ぎました。本年もよろしくお願いいたします。いつになく(といっても、ここのところ毎年のように)暖冬が続き、徳島市でも平年より20日も遅く、3日前に初雪が降ったと思ったら、昨夜は久しぶりの(高速道路が止まるほどの)雪でした。土曜日から、本校では入試がはじまるので、その前日に気象状況に応じて、学校の休校、もしくは登校時間の変更も考えなくてはと、一端帰ってから準備して、0時前に学校に来て、快適な(!)校長室で夜を明かしました。ソファがあるのですが、ここで横になって思ったのは、ある年代以上の方しかわからないと思いますが、かつてよく乗車したブルートレインのB寝台(普通車両でだいたいベッドが3段、A寝台は2段)に比べればかなり快適です(笑)。ありがたいことに、雪は0時を過ぎるとほぼ止み、朝は朝日が眩しかったくらいです。子供の登校も、多少混雑によるバス等の遅れはありましたが、平常通りにできました。すぐ近くの県立中等教育学校は、休校にしたそうですが、私は学校で夜を明かしたので、未明から雪の状況が観察できて良かったです。登校してきた生徒は、私も子供の頃はそうでしたが、多くの生徒が、うれしそうに雪を触っていました。(東北や北陸地方の方々にとっては、今や雪は災害以外の何者でも無い状況で過ごされているのに、こんな悠長なことを言うのは不謹慎かと思います。そういう『雪』の側面も子供たちには知らせなければならないと思っています)。
本校では、冬休み明けが県内の多くの学校より少々早く、1月6日でした。そして、その翌日には、本校伝統の「新年揮毫式」がありました。これは本校の伝統行事で、今年で75回目となり、昭和26年から一度も欠かすこと無く続いている行事です。私は今年で、16回、自分の名前を揮毫したことになります。そして、伝統的に校長が、ある言葉を書いて、その周りに生徒や教職員が揮毫するのが、この行事の習わしです。本校は全国の附属学校で一番早く、校長が専任校長、すなわち他校と同じように中学校現場の校長になったのですが、それまでは、大学の教授が校長を兼務していました。今でも260近くある全国の附属幼・小・中・高・特別支援学校園のうち、 2/3以上は大学の先生が校長を兼務しています。 それが平成21年に専任校長になったので、私のような者も文字を書くことができました。私は、この文字を揮毫するのが今年で5回目となりました。そして、その毎年揮毫式で書いた校長の文字を鋳造した文鎮に入れて、卒業式に卒業記念品として渡すのも伝統です。中学校は、幼稚園や小学校のような創立100何十周年というのと違い、戦後の法律改正で生まれた校種のため、全国どこの学校でも創立78年から75年くらいと似ているのですが、本校ほど、その歴史を感じさせてくれるもの(こと)が多い学校は希有だと思います。校誌「そだち」もその一つで昭和25年に創刊されて以来、現在208号まで続いております。
この揮毫式は、年に一度体育館全体に昭和26年の雄名録(全校生徒、教職員が氏名を揮毫した大きな和紙をこう呼んでいます)から、毎年の雄名録を掛け軸に表装したものを全て飾ります。今年はその数、74幅。生徒や教職員の氏名は、15000名以上に上ります。私は本校に赴任して以来、数ある行事の中でも、新年に行う(始まった頃は、元日に運動場へ集合して行っていたそうです)この行事が、伝統を感じると共に、本校の一員として歴史の一部に足跡を残せた充実感と相まって、大好きです。校長としては、この伝統を途絶えさせないのはもちろんですが、広く紹介できれば、とも考えています。15年ほど前、私が教頭の時にこの行事を保護者やOBに公開することにして、今もそれが続いており、多くの保護者やOBも見に来てくれています。また、マスコミ各社にも教頭先生から連絡をしてもらい、今年もTV局2社、新聞社1社が取材に来てくれました。新年に自身の成長を誓い仲間との絆を深める 鳴門教育大学附属中学校で伝統の「揮毫式」【徳島】(2025年1月7日掲載)|JRT NEWS NNN(期間限定公開)これも私が教頭だった時に初めて連絡したら、他校に例の無いこれだけの伝統行事に、今まで一度も取材が入っていなかったことに、マスコミの方々が驚いていたのを覚えています。詳細については、私の当日の挨拶を掲載させていただきますので、続けてお読みいただければ(大分こんなヘタな文書を読むのも飽きてきたと思いますが<笑>)幸いです。(年末・年始に自分なりに何度も遂行して、頭に入れて話したつもりですが、十分覚え切れていなかった部分もあったものの、9割方はこの通りに話しました)
令 和7 年 揮 毫 式
令和7年,新しい年が始まりました。皆さん,今年もよろしくお願いします。
今年の元旦は徳島は、おだやかな天候に恵まれました。初日の出を見に行ったり、初詣に行って今年にかける皆さんの決意など、いろいろなお願いをした人も多かったのではないでしょうか。
さて、今日は伝統ある第75回新年揮毫式です。1年生は初めての行事です。2年生は昨年に続いて2度目、そして3年生は最後の揮毫式となります。これは先ほど総務委員長さんの説明にもありましたように,昭和26年から続く,本校伝統の行事です。昭和26年というのはサンフランシスコ講和条約が締結された年で,ようやく先の第二次世界大戦が終了したことを世界が認め,日本から連合軍が撤退し,戦後の復興が本格的に始まった頃で,その当時,正月に附属中学校に集まり,当時は体育館はありませんから運動場ですが,そこで氏名を揮毫したのが始まりで,当時の附属中学生は現在お元気であれば、88歳から90歳になられていることと思います。当時の先輩たちも、今とは全く違う社会情勢の中、その年へのいろいろな思いを込めてしっかりと名前を揮毫をされたことでしょう。
そして,その当時から現在まで附属中学生や附属中学校へ勤めていた教職員の揮毫が全て保存されており,この行事が今まで74年間、一回も途絶えることがなかったということに大きな価値があるというか,これはもう奇跡的なことだと思います。コロナ禍においても、開会式にこうやって全校生が体育館に集まることはなかったものの、揮毫式はしっかりと実施されました。
今この体育館にステージに向かって右側の最も前方につるされた,昭和26年の第1回揮毫式の雄名録から,毎年書かれた雄名録が順番に体育館の壁をぐるっと囲み一番左前に吊られているのが,2年生、3年生も揮毫した昨年の雄名録です。その数、74幅の掛け軸が今,皆さんを取り囲んでいます。ここには、1万5千人に及ぶ皆さんの先輩や先生方の名前があり、その氏名に囲まれて,何とも言えない厳かな,凛とした空気を感じませんか。附属中学校の伝統を十分に感じ取ってください。そして、これだけの先輩が作り上げてきた附属中学校の伝統をしっかりと受け継ぎ,そして後輩へとつないでいくという自覚と責任を持ってもらいたいです。
それでは,私の揮毫した言葉を紹介します。大谷くん、船場くん、(生徒二人が大きな和紙を全校生徒の方に掲げてくれます) 「ちすう れいひ(知崇礼卑)」と読みます。訓読みすれば、「ち たかく れい ひくし」と読めます。
これは、本当に優秀な人は、知識を得れば得るほど、他人に対しては偉そぶらず、礼をつくすものだ、という意味です。12月にそだち、これも本校伝統の校誌で、昭和25年の創刊以来、毎年複数号が発行され続け、その208号「修学旅行記念号」が配られました。あの巻頭言に私が文書を書かせてもらいましたが、そのタイトル・・なんて誰も覚えていないと思いますが、そこには、「実るほどこうべをたれる稲穂かな」と書かせてもらいました。この言葉は聞いたことがある人も多いと思いますが、まさにこの、「知崇礼卑」と同じ意味です。この原稿を依頼された頃、ちょうど揮毫式の言葉を考えていたのです。しかし、ここに、そんな長い文字は書けないので、よく似た意味の言葉を探しました。
大谷くん、船場くん、ありがとう。(ここで、掲げていた和紙を下ろす)
賢い人が、偉そうにしていたのでは、その人の値打ちは半減します。多くのことを学び、人間的に大きく成長した「心身共に賢い者こそ、謙虚であれ!」という意味です。みなさんは、「附属中学校へ通っています。」と言うだけで、「賢いんですねぇ」って言われた経験のある人は多いと思いますが、本当にそうですか?
テストの点がいいことが「賢い」のすべてを表していないことは、誰もが知っていますね。成績に比例して、人間的な魅力度も高まってこそ、それが「本当の賢さ」であり、そういう人は皆、「謙虚」な振る舞いができると思います。本校の校訓の最後のフレーズ「人間学校」の意味を今一度しっかりと噛みしめ、STEAM教育を通して、さらに学びを深めている皆さんだからこそ、人に礼をつくす、素晴らしいヒトになってください。
2025年、皆さんが、探究心を持って、知識をどんどん身につけて賢くなることと比例して、道徳心も育ち、そして、それと共に「謙虚さ」を忘れない人へと成長してくれることを期待して,私の話を終わります。いい1年にしましょう。
最後に表題の曲です。毎年、年末・年始にはよく聴く曲です。https://www.bing.com/videos/riverview/relatedvideo?&q=happy+new+year+yuming&&mid=B023F4F6FE0DA9AD8FB7B023F4F6FE0DA9AD8FB7&&FORM=VRDGAR
昨年末の国営放送の歌合戦(本校の揮毫式と回数が同じ!) の第2部は、70年代、80年代のヒット曲がたくさん聴けて、久々に見入り(聴き入り)ました。Kポップが大好きな若い世代はどう思ったかわかりませんが、国営放送としては、ああいう時間帯も必要だと思うのですが・・・。今も活躍中で未だにあの番組に一度も出ていない大御所として、ついに小田和正さんに注目が集まっているようですが、今から年末が楽しみです。
本年も、鳴門教育大学附属中学校をよろしくお願いいたします。