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STEAM教育の推進に向けた教育の創造
―探究的な学習の充実―
AIやIoT、ロボット技術等の急速な技術の進展があらゆる領域で必要とされ、我が国や世界を取り巻く環境及び社会構造は激しく変化している。また、Society5.0時代の到来や誰も予測できなかった未曾有の感染症に対峙していくような予測困難な時代を迎えている。このような現代社会において、子供たちに、他者と協働しながら様々な変化に積極的に向き合い、課題を解決したり、様々な情報を見極めながらそれらを知識として概念的に理解し、新しい価値を創造したりすることができるような力を身に付けさせていくことが求められている。では、学校教育の中でそのような力を子供たちにどのように身に付けさせていくのか。文部科学省は、各教科等の学びを基盤とし、様々な情報を活用しながらそれらを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成を目的として、STEAM教育等の教科等横断的な学習を推進している。これを受けて、本校でもSTEAM教育を推進していくための研究実践に取り組んでいきたいと考える。STEAM教育について、中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(以下、答申と略記)では、次のように述べている。
STEAM教育については、国際的に見ても、各国で定義が様々であり、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)に加わったAの範囲をデザインや感性などと狭く捉えるものや、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲で定義するものもある。
これ以外にも、STEAM教育についての定義は様々であるが、高等学校改革を取り上げた教育再生実行会議第11次提言(以下、提言と略記)において、STEAM教育は、「各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」とされている。
さらに、答申では高等学校において、STEAM教育の実践が期待される科目として、次の科目が示されている。
高等学校においては、新学習指導要領に新たに位置付けられた「総合的な探究の時間」や「理数探究」が、
・実生活、実社会における複雑な文脈の中に存在する事象などを対象として教科等横断的な課題を設定する点
・課題の解決に際して、各教科等で学んだことを統合的に働かせながら、探究のプロセスを展開する点
などSTEAM教育がねらいとするところと多くの共通点があり、各高等学校において、これらの科目等を中心としてSTEAM教育に取り組むことが期待される。
このように答申では、STEAM教育の実践について、高等学校における「総合的な探究の時間」や「理数探究」での実践が重要であると示されている。では、中学校においてSTEAM教育をどのように推進していくのか、答申ではSTEAM教育の推進に関して、次のように示されている。
STEAM教育は、「社会に開かれた教育課程」の理念の下、産業界等と連携し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていく高度な内容となるものであることから、高等学校における教科等横断的な学習の中で重点的に取り組むべきものであるが、その土台として、幼児期からのものづくり体験や科学的な体験の充実、小学校、中学校での各教科等や総合的な学習の時間における教科等横断的な学習や探究的な学習、プログラミング教育などの充実に努めることも重要である。(下線は加筆)
これまで示してきたことから、本研究では提言に示されているように、STEAM教育を「各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」と捉える。さらに、本研究では、STEAM教育を推進していくために、各教科において、「探究的な学習の充実」に着目し、研究実践に取り組んでいく。そして、それぞれの教科において、探究的な学習を充実させることで、その教科が目指す資質・能力をよりよく育成していくこととあわせて、学習や日常生活等の様々な場面の中で、探究的に学ぶ生徒を育成していきたい。そのことが各教科の枠を越え、高等学校での「総合的な探究の時間」や「理数探究」でのSTEAM教育に生かされると考える。以上のことから、主題を「STEAM教育の推進に向けた教育の創造」、副主題を「探究的な学習の充実」とした。
文部科学省「中学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編」(以下、解説と略記)では、探究的な学習について、「探究的な学習とは、物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営みのことである。」と示している。さらに、解説には、探究的な学習をすることによって、期待できる生徒の姿を次のように示している。
探究的な学習では、次のような生徒の姿を見いだすことができる。事象を捉える感性や問題意識が揺さぶられて、学習活動への取組が真剣になる。身に付けた知識及び技能を活用し、その有用性を実感する。見方が広がったことを喜び、更なる学習への意欲を高める。概念が具体性を増して理解が深まる。学んだことを自己と結び付けて、自分の成長を自覚したり自己の生き方を考えたりする。このように、探究的な学習においては、生徒の豊かな学習の姿が現れる。
また、解説には、探究的な学習の指導のポイントとして、学習過程を探究的にするべきであると述べ、その過程を次のように示している。
【①課題の設定】体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ
【②情報の収集】必要な情報を取り出したり収集したりする
【③整理・分析】収集した情報を、整理したり分析したりして思考する
【④まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する
なお、ここで言う情報とは、判断や意思決定、行動を左右する全ての事柄を指し、広く捉えている。言語や数字など記号化されたもの、映像や写真など視覚化されたものによって情報を得ることもできるし、具体物との関わりや体験活動など、事象と直接関わることによって情報を得ることもできる。
もちろん、こうした探究の過程は、いつも①~④が順序よく繰り返されるわけではなく、順番が前後することもあるし、一つの活動の中に複数のプロセスが一体化して同時に行われる場合もある。およその流れのイメージであるが、このイメージを教師がもつことによって、探究的な学習を具現するために必要な教師の指導性を発揮することにつながる。また、この探究の過程は何度も繰り返され、高まっていく。
これまでに示したことを参考に、本研究では、各教科において、探究的な学習を充実させるために、次のようなことが大切であると考える。
さらに、今までに述べたことに付け加え、探究的な学習をすることで、生徒には次のようなことが期待できる。
このような経験を通して、生徒は探究的な学習を肯定的に捉え、別の学習でも自ら進んで探究的に学習に取り組もうとするようになる。このことも探究的な学習を充実させていくことにつながっていくと考える。
以上のようなことを大切にして、各教科で一単位時間や複数単位時間において設定された探究的な学習を充実させ、それを積み重ねていく。そうすることで、各教科が目指す資質・能力をよりよく育成することができるとともに、物事を探究しようとする態度を育成することができる。加えて、生徒に「物事を探究するためには、①~④の探究的な学習の過程をたどり、それを繰り返していけばよい」という方法知も習得させることができる。そのような生徒は、様々な学習や日常生活、社会の場面で、自ら進んで探究的に学ぶようになっていくと考える。そこで、本研究における研究仮説を次のように立てた。
各教科において、探究的な学習の過程を明確にし、その過程に基づいて、一単位時間や複数単位時間で探究的な学習の充実に向けた手立てを講じる。それらを継続し、探究的に学ぶ生徒を育成することが、STEAM教育の推進につながるだろう。
上記の研究仮説から、本研究内容を次のように設定した。
尚、この表の③整理・分析における指導のポイントについては、順番があるため頭文字が番号で示されている。さらに、上に示した学習指導のポイントを参考にすることに加えて、これまで本校が取り組んできた研究(平成29 年度から令和元年度)の成果である各教科においての見方・考え方を働かせるための手立ても参考にしていく。各教科の実践の詳細については、次項の実践事例にて述べる。
平成25年度から4年間、社会の中で活用される教科横断的な論理的思考力の育成やそのための教科連携の在り方を研究してきた。平成29年度から4年間、研究主題を「社会に生きて働く資質・能力の育成」、副主題を「見方・考え方を働かせた深い学びの実現を通して」として、研究実践に取り組んだ。深い学びを実現するための授業設計モデルを構成し、各場面で働く見方・考え方を明確にし、これらを働かせるための手立てを講じることで、教科の本質に迫り、深い学びを実現することができたと考えられる。また、令和元年度から2年間、教育課程研究指定校事業として、研究主題を「社会に生きて働く資質・能力の育成を目指した総合的な学習の時間の創造 」、副主題を「組織的な連携と『考えるための技法』等の活用を通して」として、総合的な学習の時間の充実に取り組んだ。