本校の研究

総合理論

STEAM教育を取り入れた総合的な学習の時間の実践にあたって

 本校では、研究主題を「STEAM教育の推進に向けた教育の創造」、副主題を「探究的な学習の充実」として、研究実践に取り組んでいる。さらに、今年度からは第3学年で行っている総合的な学習の時間において、STEAM教育を取り入れることによって、研究主題に迫っていきたいと考えている。STEAM教育を取り入れるにあたっては、本学の胸組虎胤教授の指導・助言をもとに、STEAM教育についての本校の捉えを明らかにするとともに、本校で行っている総合的な学習の時間における学習内容や活動等の一部を修正・改善していきたいと考えている。その概要について、(1)・(2)で示す。

(1)STEAM教育における本校の捉えについて

 本校では、次のようにSTEAM教育を捉えた。

社会、自然、生活も含めた現実世界に関する問題発見・解決に向けて、S、T、E、A、Mの視点を取り入れ、個性・能力を発揮して創造的成果を生み出す力を養う教育。

尚、S、T、E、A、Mのそれぞれの視点については、以下に示す。

視 点
S 【科学の視点】
自然科学についての知識や思考方法に合っているか。
T 【技術の視点】
自分の希望と社会の要望を認識して、情報収集を適切に行い、安全性や環境負荷、経済性等を考慮した上で現状改善の工夫をしているか。
E 【工学の視点】
問題解決の構想や計画が目的と必要性に合致し、実現可能であるか。
A 【アートの視点】
自分の感性と他者への共感等の思いを大切にしながら、互いの考えを生かそうとしているか。新発想や新発見と思うことを示しているか。表現方法等を工夫することによって、他者に伝わりやすくなっているか。
M 【数学の視点】
数量や図形、データ等に着目し、事象を数学的に捉え、根拠を明確にしているか。

(2)総合的な学習の時間にSTEAM教育を取り入れることについて

 本校の総合的な学習の時間では、第3学年において、各教科で身に付けた資質・能力を生かしながら、社会的な問題に対して課題を設定し、よりよい解決策を提案する学習を行っている。このような学習に、(1)で本校が捉えたSTEAM教育を取り入れることで、これまで以上に、生徒一人一人の個性が生かされ、さらに、創造性が発揮された深い学びにつなげられるだろう。その際には、生徒が自分の思いや感性、他者への共感等を大切にしながら、互いの考えを生かそうとするAの視点を土台とした上で、自分たちの提案にS、T、E、A、Mの視点がすべて含まれるようにする。そして、このようにして考えた提案は、次の要件をすべて満たす提案になると考える。

 上記の要件を満たした提案は、他者や社会に支持され受け入れられやすく、合理的かつ具体的で、社会の変革につながる創造的な提案であると考える。加えて、学習の終盤には、各提案の長所を生徒同士で伝え合う場や、各分野の有識者に提案について講評をいただく場を設定していく。このような場を設定することで、生徒は改めて自分たちの提案のよさや、その提案と現実世界との関連性を理解することができると考える。そして、生徒はその提案が社会的に価値のあるものであると認識し、「社会に役立つ可能性がある提案を自分たちにも生み出すことができた」という自己有用感をもつだろう。
 このことによって、生徒は、社会に参画しようとする意志をもつとともに、自ら進んで社会をよりよい方向へ変革していこうとする意欲を高めることができると考える。これらのことは、総合的な学習の時間で育成を目指す資質・能力における「学びに向かう力、人間性等」の中に含まれる「積極的に社会に参画しようとする態度」を十分に養っていくことにつながる。
 ここまで、第3学年におけるSTEAM教育の視点から社会、自然、生活も含めた現実世界に関する課題解決への取組について述べてきた。尚、それらの取組が今後より充実したものとなるために、第1、2学年の総合的な学習の時間において、次のような学習活動を行う。
 第1学年では、S、T、E、A、Mの視点を取り入れた持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けての取組を提案する学習活動を行う。この学習活動は、先述した第3学年の学習活動と同様の構成で展開する。しかし、この段階では、S、T、E、A、Mの視点への理解が不十分であるため、これらの視点を全て取り入れた取組を提案することは難しいだろう。そのため、第2学年において、職場体験学習や修学旅行等から実社会における様々な取組や創意工夫をS、T、E、A、Mの視点で整理・分析する学習活動を行う。そうすることで、生徒は、第1学年の時よりもS、T、E、A、Mの視点への理解を深めることができるだろう。そのような生徒は、上記で述べた第3学年における学習活動において、より実社会に即した、S、T、E、A、Mの視点を全て取り入れた解決策を提案することができると考える。

 以上、(1)・(2)で述べたことをもとにし、文部科学省「今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(中学校編)」に示されている「探究的な学習の過程における具体的な学習指導のポイント」を踏まえて、STEAM教育を取り入れていく。

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