本校の研究

教科実践編(外国語)

英語科における授業実践について

福池 美佐、青木 望、小川 真理

(1)本単元の概要(1年生:Think Globally, Act Locally)

 本単元“Think Globally, Act Locally”では、登場人物が目標とする人についてクラスでスピーチをする場面や、国際交流イベントに参加して世界的問題についてのプレゼンテーションを聞く場面が取り扱われている。そこで、英語を通して世界で起こっている問題について関心をもつ機会としたい。
 言語材料としては不定詞の名詞的用法〈to+動詞の原形〉や、人やものの様子を視覚的な情報として表す〈look+形容詞〉が取り扱われている。また、〈want to+動詞の原形〉の表現は小学校でも扱われており、生徒にとっては馴染みがあり定着が早いと考えられる。
 さらに、単元終末の言語活動(2時間構成)において、探究的な学習を充実させ、単元の目標を達成することを目指す。活動の流れとしては、SDGs(持続可能な開発目標)が示す17の目標を理解し、その目標に照らし合わせ、世界的な問題から自分たちの身近な問題を解決することに向けて、その現状や自分の気持ちを伝えるためのポスターを作成し、校内に掲示する。その際、外国から来校された方にもこれらのポスターを見ていただき、本校の現状と取り組みを知っていただけるように、適切な語句や文を用いたり、構成などを工夫したりすることで、まとまりのある英文を書くことができるように指導していく。
 その活動において、生徒が取り組む課題は次の通りである。

課題SDGsの達成に向けて、より多くの人に附中の現状や、自分の気持ちを伝えるためのポスターを作成しよう!

 次項で実践の詳細について述べていく。

(2)本単元の目標

(3)本単元の評価規準

知識・技能 思考・判断・表現 主体的に学習に
取り組む態度
Ⅰ 不定詞(名詞的用法)や〈look+形容詞〉の特徴やきまりを理解している。
Ⅱ 不定詞(名詞的用法)や〈look+形容詞〉の特徴やきまりの理解を基に、したいことやしようとしていること、人やものの様子について問答したり、書いたりする技能を身に付けている。
世界や地域の問題を伝えるために、したいことやする必要があることについて、簡単な語句や文を用いて自分の気持ちを書いたり、情報を整理して伝えたり、相手からの質問に答えたりしている。 世界や地域の問題を伝えるために、したいことやする必要があることについて、簡単な語句や文を用いて自分の気持ちを書いたり、情報を整理して伝えたり、相手からの質問に答えたりしようとしている。

(4)本単元における指導と評価の計画

ねらい(■),言語活動等(丸数字) 評価方法・
留意点等
■単元の目標を理解する。
■写真を見て、世界の子供たちがしていることについて伝え合う。
①自己目標を設定する。
②プレビューを視聴し、戸田先生とメグの会話内容について伝え合う。
■目標とする人についてのスピーチを聞き、その内容を理解する。
①自分がしたいことについて書く。
②教科書の本文に出てきているKey Sentenceの意味や使い方を確認する。
■メグと海斗の会話を聞いて、何について話しているのかを伝え合う。
①本文の内容が理解できているか確認する。
②教科書の本文に出てきているKey Sentenceの意味や使い方を確認する。
■自分や相手がしたいことについて伝え合う。
①行きたい場所やしたいことなどについて伝え合う。
②相手の行きたい場所やしたいことについてまとまりのある英文を書く。
■国際協力・交流イベントでの発表内容を理解する。
①世界で起きている問題について理解する。
②教科書の本文に出てきているKey Sentenceの意味や使い方を確認する。
■附中においてのSDGsの達成に向けて、ポスターの内容を考える。
①世界的な問題や自分たちに身近な問題を挙げる。
②ポスターの内容を考える。
7本時 ■附中においてのSDGsの達成に向けて、ポスターを作成する。
①アイデアメモをもとにポスターの原稿を書く。
②ポスターを作成する。
〈活動の観察〉
〈ワークシート〉
・附中におけるSDGsの達成に向けてのポスターを作成するために、現状や取り組み等について、事実や自分の考えを整理し簡単な語句や文を用いてまとまりのある文章を書いている。
後日 ペーパーテスト ・大単元終了後実施する。

(5)第6・7時における探究的な学習の過程

第6時 ①課題の設定 SDGsの達成に向けて、読み手に配慮しながら、課題を設定し、学習計画を立てることで見通しをもつ。
②情報の収集 設定した課題を解決するために、インターネットやパンフレットなどを用いて必要な情報を収集する。
③整理・分析 読み手に配慮しながら、収集した情報を分類したり、取捨選択したりすることで必要な情報や自分の考えを整理する。
第7時 ④まとめ・表現 ポスターに載せる内容を、適切な語句や文を用いて、読み手に配慮しながら、まとまりのある文章を書く。

(6)授業実践の様子

①課題設定の過程
 まず、SDGsについての理解を深めるために、国連のウェブサイトに掲載されている動画を全体で視聴した。次に、本単元における終末の言語活動として、自分たちの身近な問題を解決していくことに向けて、校内掲示用のポスター作成に取り組むことを伝えた。さらに、「作成したポスターは誰に見てもらいたいですか。」と尋ねると、「附中生」「来校者」などの意見が出た。続いて、「来校者」の中には、外国から来校された方も含まれることを全体で確認した。そして、「伝えたいメッセージを明確に伝えるためには、どのようなことに気を付ければよいですか?」と問いかけた。生徒からは、「単語の綴りや文法を間違えないようにする」「今までに習った単語や文法を使って、より多くの人に伝わるような文の構成を考える」などの意見が出た。それらの意見をもとに、本活動の課題を次のように設定させた。

課題SDGsの達成に向けて、より多くの人に附中の現状や、自分の気持ちを伝えるためのポスターを作成しよう!

 その後、作成計画を全体で確認し、今後の活動への見通しをもつことができるようにした。

写真1収集した情報をワークシートにまとめている様子

②情報の収集の過程
 この過程では、ポスターの内容を考えるために、SDGsについて詳しく掲載されたウェブサイトなどを活用して、SDGsの達成に向けての取組について、情報の収集を行った。その後、収集した情報をワークシートにまとめさせた(写真1、図1)

③整理・分析の過程
 この過程は、収集した情報を読み手に配慮しながら整理していく過程である。まず、自分が伝えたい内容が明確に伝わるように、まずは日本語で文章を書くよう伝えた。さらに、ポスターには、「タイトル」「現状や自分の思い」「伝えたいメッセージ」をそれぞれ盛り込み、内容に合致するSDGsのロゴマークを1つ以上載せるように伝えた。

写真2書いた英文を相互評価している様子

④まとめ・表現の過程
 この過程は、前の過程までに収集した情報を整理・分析したことを受け、それをまとまりのある英文に直し、ポスターとして表現する過程である。まず、前時で出された「メッセージを明確に伝えるために気を付けること」を確認しながら、まとまりのある英文を書いていくよう伝えた。その際、辞書を活用したり、ALTの助言を受けたりするよう促した。さらに、よりよい英文に仕上げるために、「内容」「語句」「文法」の3観点で相互評価を取り入れ(写真2)、自分が書いた英文を修正する手立てとした。そして最後に、学習支援アプリを用いて、ポスターの作成に取り組ませた(図1)

図1 ポスター作成に向けてアイデアをまとめたワークシート
   (※ワークシートには探究の過程を示している)

(7)成果と課題(〇…成果、●…課題)

図2 生徒が作成したポスター例

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