校長室から

江戸しぐさ(前期終業式の話から) 2012年10月8日





終業式にあたり,「江戸しぐさ」の話をしておきます。
江戸は当時,世界でも最大級の大都市でしたが,警察官は今よりもはるかに少なかったのです。このような少ない警察官(同心)で,とにもかくにも治安を維持できたのは,争いを少なくするようなルールやマナーがあったからです。これを「江戸しぐさ」といいます。
【参考】
1k㎡当たりの人口密度 江戸60000人⇔現在の東京5700人
同心24人⇔警察官42000人
 
では,その「江戸しぐさ」を紹介しましょう。
 
まずは,みんなもよく知っている「ゆびきりげんまん」です。
この「ゆびきりげんまん」には,うそをついたら,指を切る,げんこつを1万回,針千本飲ます,さらに最後に「死んだらご免」といっていました。これは「私が死んでしまったら約束は守れない」という意味があったようです。
 
次は「戸閉め言葉」です。
「でも」「だって」「しかし」「べつに」「そうは言っても」などと否定して,人の話を途中で遮るものや無視するような言葉で相手をシャットアウトしてしまうものもあります。
人の話を最後まで聞かないことは失礼にあたり,謙虚さを大事にする江戸しぐさでは,自己中心的な人とみなされたそうです。
また,自分の話を聞いてくれない人を本能的に避けてしまうため,「戸閉め言葉」は相手の言葉を受け入れないばかりか,相手の心を閉ざしてしまう言葉なのです。
 
次は,「うかつあやまり」です。
たとえば人に足を踏まれた時,踏んだ人はもちろん謝りますが,踏まれた人も「こちらこそ,うっかりしまして(自分が迂闊でして)」と,口には出さなくともそぶりを見せると,その場がなんとなくうまくおさまりますね。そして,その相手ともいい雰囲気になります。
「うかつあやまり」の真意は,トラブルを事前に察知し,素早く対処できなかった自分のうかつさを反省することにあるのです。
 
【次の話は,終業式の時間の都合でカットしました】
少しうかつあやまりとは違うのですが,明治から昭和にかけて活躍した作家・長谷川時雨(はせがわ しぐれ)の「旧聞日本橋」に登場する時雨の祖母は,乱暴そうな者が来ると,近寄らない先から「あいた(痛)!あいた!」と声をあげたそうです。これにはどんな乱暴者もびっくりして立ち止まるか,静かに歩くかしたそうです。嫌な思いを相手も自分もしないように,前もって相手に注意を促す祖母の頓知と度胸,機敏なしぐさに,時雨は舌を巻いたそうです。
 
最後に「かさかしげ」です。
せまい路地で,雨の日にすれ違うときに,傘を人のいない方へ傾けてすれ違えば,滴で相手をぬらさずにすみます。また,相手の傘を破らずにすみますね。
 
同じようなことですが,ぶつからないように歩くのも「江戸しぐさ」でした。
肩と肩がぶつからないように右肩を少し引いて歩く「肩引き」,もっとせまい道になると横になって歩く「蟹歩き」と言うのがそれに当たります。
 
今まで見てきた「江戸しぐさ」は,6歳までに,体で覚えるまで,繰り返し,癖になるまで教えられたのです。癖になってしまえば,大変ということはなかったようです。
 
9歳までに教えられた「江戸しぐさ」もあります。それは「挨拶」です。しかも,ただの挨拶ではありません。お世辞といって,相手を気持ちよくさせる言葉かけ,すなわちきちんとした言葉遣いができるようになることです。
 
江戸しぐさは,自分以外の人や世間のために働くことに人間の価値を置くことから生まれたもので,根底にあるのは,思いやりや気配りです。言葉ひとつで気持ちが離れてしまわないよう,日頃から注意しておきたいものです。
 
今紹介した「江戸しぐさ」から,附中のみんなが嫌な思いをせずに生活できる「附中しぐさ」を考えてみてください。
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※次のHP等を参考に作成しました。
http://homepage1.nifty.com/TOSS-TSUKUDA/edosigusa1.htm


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