校長室から

♪ 流れる季節の真ん中で ふと日の長さを感じます …… ♪





   子供たちがこれから生きていく社会は,内閣府がしきりにPRしているように「Society5.0」すなわち「超スマート社会」と称され,あらゆるものがネットワークでつながり,そこには,自動運転やドローンによる宅配等,夢にあふれた便利な世界が広がるようです。確実にそういう方向に進んでいるのでしょうが,もっとわかりやすい,これからの社会を表現した言い方は「予測不能な社会」です。超スマート社会になっていくんだろうなぁというイメージよりも,予測不能な社会になっていくということを,今回の新型コロナウイルスによるパンデミックが強烈に実証しています。

  そんな中,人生にとって,かけがえのない義務教育最後の2週間,学校が休校となり自宅待機(その間に高校入試は予定通り実施されました)となってしまった,本校の3年生149名も今日(3月13日),無事卒業式を終えて,学び舎を巣立っていきました。在校生もいない,式典の中で歌うことも制限される卒業式になってしまいましたが,教職員一同,何とか子供たちの生涯の思い出に残る卒業式にしたいと知恵を絞ってマスク着用のうえ,換気にも配慮しながら実施しました。心配だった天気も曇りから,一時雨というふうに前日までは聞いていたのに素晴らしい快晴でした。天候が子供たちの門出に花を添えてくれたことに朝から空を眺めて,どこにも怒りや苛立ちのぶつけようのない現状の中で「何の罪もない子供たちに,これくらいの御褒美があっても当然だよな」っと思ってしまいました。事前の校長会で,各校の予定している卒業式の縮小内容を聞いていましたが,やはり健康面最優先の中で,子供ファーストの視点で内容を考えました。ほとんど歌は歌わせず,曲はCD等で流す学校が多かったようですが,本校は子供たちが毎年,卒業式後に歌う,自分たちがチョイスした歌をしっかりと歌い切って感動の中,体育館から退場していましたので,これだけは歌わせたいなと思っていました。休校が決まった翌日「あの曲だけでも歌えないのですか」という切実な子供たちの声を多く耳にしました。その結果,式の開会前に流してきた3年間を振り返るプロローグ(思い出のアルバム)も急遽,短縮バージョンにしてでも流したいという3年団の思いから,教員が編集し,間に合わせました。式典冒頭の「国歌斉唱」は,市内の学校はすべて曲を流すと言う事でしたが,本校では,男性の音楽教師が,最近の国際試合のように,ステージ上の国旗に向かって,無伴奏で独唱してもらうことを提案したら,快く引き受けてくれました。音楽の授業に関わってくれた教員の心のこもった美声が体育館全体に響き渡り,式に重厚感が加わり,例年以上の厳かな雰囲気で式典がスタートしました。毎年している予行演習も無く,当日の朝,30分間だけ,体育館に入って説明を聞いただけなのに,見事に入退場から,式典内容の全てをしっかりとやり遂げた卒業生は,とても頼もしく見えました。時間短縮なら,学校長式辞こそ,プリントに印刷して配ろうかとも思ったのですが,私としても最上級生としてがんばってきた3年生の最後の2週間をこんな状況で過ごさせてしまったことへの申し訳ない気持ちや,お祝いしたりエールを送る気持ちの深さに式典の規模の大小は関係ない,と卒業生に伝えたかったので,一応式辞を述べさせてもらいました。私自身も教員になって,もちろん初めて味わう長期の休校措置と,その中での卒業式。教職員が知恵を出すことで,これだけの式典ができることに,また子供たちがいないときに全職員で教室や廊下,中庭や校門通りの外掃除を一生懸命行い,会場準備もみんなで取り組んだ事実が卒業生にも伝わったからこそ,これだけの卒業式ができたんだなぁ,と感動しました。最後に子供たちが歌った「3月9日」(レミオロメン)も感動的でした。ということで,昭和の曲しか紹介しない私がタイトルに書いたのは,子供たちが今年の卒業式の曲に選び練習し,気持ちを込めてしっかりと歌った2004年3月9日リリースの曲です。マスク越しとはいえ,子供たちが一生懸命歌う歌声は,本当に素晴らしかったです。
♪ 新たな世界の入り口に立ち, 気づいたことは一人じゃないってこと 瞳を閉じれば  あなたが まぶたのうらにいることで どれほど強くなれたでしょう あなたにとって私も そうでありたい ♪


    

     鳴門教育大学附属中学校第34回卒業証書授与式 学校長式辞

 

  式  辞

 例年よりも早く,春の息吹を感じる季節を迎えている中で,新型コロナウイルス感染症対策の取組として,今月に入ってから続いているこのような長期の休校措置は,本校72年の歴史の中でも,もちろん初めてのことです。卒業生の皆さんには,中学校生活の最後の二週間がこのような状況となってしまい,申し訳ない気持ちでいっぱいです。
  そのような状況の中,開催さえも危ぶまれた,鳴門教育大学附属中学校第34回卒業証書授与式が,例年とは違う形とはいえ,開催できますことは,西村副学長様並びに、北島保護者会 会長様はじめ,本日ご列席いただきました全ての皆様の御理解と御協力のおかげです。心より感謝申し上げます。
  本日の開催にあたりましては,規模を縮小するようにとの通達もあり,在校生や御来賓の 多くの方々が参加できなかったり,卒業生の皆さんの心のこもった歌声も今日は,その全てを聴くことはかないませんが,卒業生に対する今日の日をお祝いする気持ちや皆さんの将来へのエールを送る気持ちに開催規模の大小は関係ありません。
  今日この場に同席できなかった在校生も,先輩達と共に過ごした日を思い,本日附属中学校を巣立つ 149名の皆さんの御卒業を心から祝福しています。皆さん,晴れの御卒業,本当におめでとうございます。
  先ほど代表の人に渡した令和の年号が入ったものとしては最初となる卒業証書は、中学校3年間を学び終え、義務教育を終えたことの証です。今日帰ったら,しみじみと卒業証書を前に中学3年間を振り返ってみてください。
  保護者の皆様におかれましては、多感な中学3年間、いろいろな事があったと思われますが、これまでのご労苦に敬意を表しますとともに、高いところからではございますが、お子様の ご卒業を心からお慶び申し上げます。
  このような形での卒業式となりましたが,その中でも「思い出のアルバム」の上映だけは是非実施したいという,教職員の総意で,先ほど3年間のお子様の成長を見ていただきました。
  3年前の入学時を思い起こし、立派に成長したお子様の姿に、喜びも格別なものがあったものと拝察いたします。
  さて,卒業生の皆さん,皆さんが生きていくこれからの世の中は,まさに想定外の事態が起こった 今回の一件のように「予測不能」な社会と言われています。AIがどんなに発展して,
一見,便利な世の中がやってこようとも,人が幸せに生きる,生きたいという欲求を満たすためには,人としての「思いやり」のある言動のできる,その元となる「美しい心」が重要であり,それを無くして人類の本当の幸せはやってこないと思います。
  人を思いやる心を持ち続ければ,必ず皆さんの周りには,皆さんを支えてくれる仲間の輪ができます。これからの時代,世の中の中心となって活躍する皆さんだからこそ,本校で培った,人間学校の精神を忘れないで頑張って欲しいと思います。
  終わりになりましたが,保護者の皆様には,本日まで本校の教育活動に,温かい御支援と御協力を賜りましたことに,心よりお礼を申し上げます。今後とも本校の応援団として,附中を見守っていただければ幸いです。
  また,西村副学長様,北島保護者会 会長様には,これまで本校教育にお寄せいただきました御理解と御支援に厚くお礼申しあげます。ありがとうございました。
  卒業生の皆さん,いよいよ巣立ちの時が近づいてきました。今一度,ステージ右側に掲げられた,2か月前に揮毫した雄名録の掛け軸を見てください。昭和26年から一度も欠かすことなく続いている新年揮毫式の70幅めの掛け軸となります。令和最初の揮毫式で書いた皆さんの名前は永久に本校に残り,後輩に受け継がれていきます。
  今から10年ほど前に,この揮毫式を公開行事としました。将来,皆さんが悩んだり壁にあたってしまうことがあれば,遠慮なく揮毫式に来て,この雄名録を見つめてください。そこには,自分の書いた氏名とともに,一緒に中学時代を過ごした仲間と,恩師や後輩の名前があります。
  きっと皆さんの背中をそっと押してくれる勇気を与えてくれることでしょう。
  これから,皆さんは,それぞれが描く夢に向かって進んでいきます。その夢をかなえるためには「美しい心」を持ち続けることが大切です。『清心事達』の思いを忘れず,邁進していってください。
  今回のこの非常事態をみんなで我慢して,無事乗り越えられたことを誇れる日が来ることを信じ,卒業生149名の限りない前途を祝福して,式辞といたします。

  令和2年3月13日
                                                              鳴門教育大学附属中学校 校長 大 泉 計

 

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